艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~

「彼女には、関西の工場の事務に入ってもらったよ。少し辺鄙な場所になるけど、こっちにいるよりは実家に近そうだし良いだろうと思って」

「助かりました。あのままうちで雇うのは無理があったので」


ローテーブルを挟んで向かい合わせにソファに座っているふたりに、コーヒーをふたつトレーに乗せて近づく。
話の腰を折らないように、横からそっとコーヒーカップを朝比奈さんの前に置くと。
彼は、私に目を向け「ありがとう」と優美に微笑んだ。


このふたりは、並んでいるとあまりにも華やかで、凡人の私は遠くから眺めているに限る。ひっそりキッチンに潜んでいようと思ったのだけれど。


葛城さんの前にもカップを置くと、すぐさま彼の手に捕まり隣に座らされる。そのまま話の続きを聞くことになってしまった。

< 364 / 417 >

この作品をシェア

pagetop