艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
「圭さんは甘いものが苦手だから、って」
彼は、スーツの上着を脱いでクローゼットの中にかけると、弱ったように片手で頭を掻いた。
「苦手、というか。食べられない、ことはないよ」
「でも好きじゃないんですよね? どうしてそんなしょうもない隠し事するんですか!」
「隠してたわけじゃないよ、藍が作ってくれるお菓子は美味しく、」
「そんな適当なこと言ってごまかさないでくださいっ」
本当に、この人は、どうして!
こんなしょうもない嘘を!
出会ってから、これまで。
琥珀糖に始まって、コンポートにシフォンケーキ、プリンに寒天ゼリー、シャーベット。
彼が美味しそうに食べてくれるのが嬉しくて、張り切って、ほとんど毎日作っていた。
あの顔は、演技だったのか。
彼のことだから、どうしてそんなことを隠してたのか大方の予想はつくけれど。