艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
「……草食系、というのは似合わない気がするなあ」
だけど、そうあって欲しいと思う。そうでなければ、政略結婚というのはあまり良い結果を生まない気がする。
恋愛を自由に謳歌するタイプなら、外でいくらでも女性を作りそうだ。だって、あの容姿だ。相手には事欠かないだろう。
政略結婚でも私たちの関係をおざなりにするつもりはない、と言った、あの言葉を信じるしかない。
ざば、と浴槽から上がる。
この猶予の時間は、決断するために使うのではなく、心の準備を整える為だけに使うことになりそうだ。
そう、結婚後のことばかり考えている私はすでに、この縁談を受け入れるつもりでいた。
どうせ気になる人もいないなら、今ここで花月庵に初めて関われるこの縁談が、運命だと私には思えたのだった。
女として幸せになれるのかどうか、定かでなく想像もできない。
そこが普通の結婚とは少し違うところではあるのだけれど。