艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~


その日は、大安吉日。
雲一つない、美しい晴れの日だった。


約束通り、午後一時に迎えに来た車に葛城さんの姿はなく、どこに行くのかも聞かされないまま車は走る。
着いたところは、都心部から離れたところにある広大な庭園だった。茶会や各種イベントなどでよく利用されていて、私も来たことがある。


隣接されているホテルで、私はなぜか部屋を一室与えられ派遣された美容師や着付け師にあれよあれよと翻弄されること、約二時間。


藍色の地に、金と浅葱の見事な刺繍で花を散らした美しい着物で、私はホテルスタッフに付き添われて庭園を歩いている。


「あちらにいらっしゃいます」


と、示された先には、グレーのコントラストが華やかなスーツを着こなす葛城さんが立っている。ジャリ、と石を踏んで近づいた。


こちらを見て笑った葛城さんの手には、真っ赤なバラの花束がある。いつか思ったみたいに、やっぱりよく似合っていた。

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