艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~

「これ、サファイアですか?」


どうやら婚約指輪というよりは、今夜の演出アイテムらしい。左手を持ち上げて、指輪を少し照明の下で透かして見る。
宝石に詳しいわけではないけれど、サファイアくらいは見たことがある。その石は濃いブルーだけれどサファイアにしては透明度が高い気がした。


「ブルーダイヤだよ」

「ブルーダイヤ……」


言われて一瞬頭に浮かんだのは、洗濯洗剤だった。だがそうじゃない、今尋ねたのは普段使用の洗剤の名前ではなくこの指輪の石のことだ。


高価そうな指輪だと思っていたけれど……ずしっと急に指輪が重くなった気がする。
もしやこれは、私が思う指輪の相場からは遠くかけ離れたお値段なのでは……。


「藍さんに似合うかなと思ったんだけどね。希少な石だから、あんまり大きな石が今は見つからなくて」

「いえいえいえ充分大きいでしょう? 小さいの? これ?」

「遠くから見え辛くない?」

「遠くからまで見えなくていいですよ! というか散財しすぎです!」


指輪に着物に、この日の為に一体いくらかかったのだろう。考えただけでぞっとする。

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