艶恋婚~御曹司と政略結婚いたします~
これはきっと、あれだ。
仲睦まじい姿を見せる演出に違いない。


そうは思ってもすぐに返す言葉なんて思い浮かばず、ただ狼狽えた。


「そんな、言われたことないです」

「本当だよ。佇まいというか、凛としていて人の目をひく。着物の着こなしも所作も綺麗だ」


続いた言葉に、拍子抜けした。
なんのことはない、彼が見ているのは礼儀作法の部分的らしい。


「着物は、祖母に連れられていく茶会で着なれてますし。礼儀作法も祖母が厳しかったので」


その他のことは甘かったような気がするけれど、昔の人だからかとにかく礼儀作法に関してだけは祖母は誰より厳しかった。
美しく見える礼の仕方だとか背筋だとか、よく背中を叩かれたものだ。

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