Jewels
震える声で翠玉がつぶやく。


「…どうしてそういう意地悪を言うの?」


琥珀は気にしない様子で答える。


「ほんとのこと言ってるだけだろ。」


翠玉は小さな小さな声でつぶやく。
自分自身に問いかけるように。


「…なんで私じゃ駄目なの?」

「ん?」


琥珀には聞こえなかったようだった。
翠玉は少しだけ声を大きくして問いかける。


「姉様は兄様と会わなくてはならないのに、どうして私は会っちゃだめなのかしら。」

「解りきったことだろ、紅玉様は金剛の婚約者、お前はその妹。立場が違うんだよ。」


翠玉は琥珀を睨んだ。
あどけない大きな緑色の瞳が琥珀を射る。


「『お前』って、失礼じゃない?」


翠玉が小さな頃からの付き合いだというのに、今更な言葉だ。
琥珀は翠玉の意を計りかね、なだめるように言う。


「そうかな。俺とお前の仲だろ?」


翠玉は納得できずに詰め寄る。


「姉様が『紅玉様』なのに、なんで私は『お前』なの?私も王族の血をひいているのよ。『翠玉様』って呼びなさいよ。」


琥珀は翠玉の気に入らない理由を察して苦笑する。
姉への劣等感だ。


「俺を『琥珀様』って呼ぶなら考えてもいいけど?」

「なんで琥珀なんかに『様』付けしなくちゃいけないの?」


翠玉はますますむくれている。
笑いながら琥珀は優しく言った。


「嫌なら『兄様』でもいいぞ。」


思いがけない提案に、翠玉の動きが止まった。


「琥珀が『兄様』?」

「俺だってお前が小さい頃から面倒看てやってんだ、金剛が『兄様』なら、俺だって『兄様』だろ?」

「…ふたりとも『兄様』なんてややこしい。」

「じゃあ『琥珀兄様』にするか?」

「…新鮮な響きね。」


翠玉は、少し笑った。

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