Jewels
翠玉は背筋を伸ばし、硬い声で返事をした。


「解っています。」

「解っているなら、もうあまり金剛のところには出入りするな。紅玉様は妹のお前にすら嫉妬してる。」


翠玉が思わず振り向く。


「そうなの?」

「じゃなきゃあのじいさんがあんなこと言うわけないだろ?」


琥珀は聞いていたのだ。
『いつまでも金剛の傍に寄るな』という黄金の言葉を。


「誤解だわ。だって兄様は私のこと、女だとすら思っていないもの…。」

「紅玉様にはそうは見えないんだろうさ。」

「姉様も損な人ね。」

「哀れに思うなら兄離れしろ。」


哀しげにつぶやく翠玉に、琥珀は言い聞かせるように話す。

翠玉はふと、思いついたように琥珀を見上げた。


「…琥珀?随分と姉様の肩を持つのね?」


琥珀は慌てたよう目を泳がせている。
こころなしか、顔が赤くなった気がした。


「お前のために言ってるんだぞ?」


翠玉は琥珀をじろりと睨む。
そしてため息をついて視線を外した。


「まぁいいわ、そういうことにしておきましょ。」

「お前なぁ…人がせっかく…」

「言いたいことはそれだけ?私、もう行きます。」


翠玉は琥珀に背を向け、金剛の工房から立ち去ろうとする。

綺麗な服は、土埃で汚れてしまっていた。

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