Jewels
第1章
暗い部屋。
カツーン
カツーン
硬質な音が響き渡っている。
息がつまるほど、真剣な音。
男がひとり、ノミと鎚を振るっている。
肌の色は透きとおるように白く、金色のまつ毛が薄い青の瞳に影を落としている。
繊細な顔立ちに似合わず、力強い仕草。
大きな石を、彫っている。
土埃に汚れた作業服からは、たくましい腕がのぞく。
ぽたり
汗が、流れ落ちた。
少女がひとり、男を眺めながら、机に腰掛けていた。
長い褐色の髪を綺麗な髪飾りでまとめている。
薄い柔らかな布を重ね、随所に飾りがきらめくドレス。
土埃の部屋に不似合いな着飾り様だ。
少女は考えていた。
あまり外からの光が入らないこの部屋は、まるで世界から切り離されたかのようだ。
ふたりだけを残して、時が止まっているかのように思える。
暗い部屋のささやかな照明に、男の金髪が透けて輝いている。
彼を包む土埃さえも、きらめいて見えた。
完成された絵画のごとく。
たったひとりで、鑑賞している。
ずっと眺めていたい。
幸せだった。
彼をひとりじめしているのだ。
しかし、彼女は知っていた。
時は流れているということを。
このふたりだけの時間を、もうすぐ自分の手で終わらせなければいけないことを。
懐中時計をちらりと見る。
カツーン
カツーン
彼が石を刻む音。
それが、このふたりだけの時間の終わりまでをカウントダウンしている。
カツーン
カツーン
硬質な音が響き渡っている。
息がつまるほど、真剣な音。
男がひとり、ノミと鎚を振るっている。
肌の色は透きとおるように白く、金色のまつ毛が薄い青の瞳に影を落としている。
繊細な顔立ちに似合わず、力強い仕草。
大きな石を、彫っている。
土埃に汚れた作業服からは、たくましい腕がのぞく。
ぽたり
汗が、流れ落ちた。
少女がひとり、男を眺めながら、机に腰掛けていた。
長い褐色の髪を綺麗な髪飾りでまとめている。
薄い柔らかな布を重ね、随所に飾りがきらめくドレス。
土埃の部屋に不似合いな着飾り様だ。
少女は考えていた。
あまり外からの光が入らないこの部屋は、まるで世界から切り離されたかのようだ。
ふたりだけを残して、時が止まっているかのように思える。
暗い部屋のささやかな照明に、男の金髪が透けて輝いている。
彼を包む土埃さえも、きらめいて見えた。
完成された絵画のごとく。
たったひとりで、鑑賞している。
ずっと眺めていたい。
幸せだった。
彼をひとりじめしているのだ。
しかし、彼女は知っていた。
時は流れているということを。
このふたりだけの時間を、もうすぐ自分の手で終わらせなければいけないことを。
懐中時計をちらりと見る。
カツーン
カツーン
彼が石を刻む音。
それが、このふたりだけの時間の終わりまでをカウントダウンしている。