Jewels
金剛の温もりを感じながら、翠玉は考える。

自分は一方的に金剛に愛を要求してはいないか。
いや、していない。


金剛のどこが好きだかはっきり言えるか。

我侭なところも、石を彫っている姿も、王子として堂々としている姿も全て好きだ。

いつでも隣で見ていたいと思う。


黄金は言った、『金剛の我侭を受け入れる姫君は紅玉くらいしかいない』、と。
違う、と翠玉は思う。
当然自分だって当てはまっている。

いつだって金剛の我侭に付き合ってきた。
次女ではあるが、同じ王族の嫡女である。

はっきり言って紅玉よりも翠玉の方が金剛に相応しい。
そんな自負すらあった。


それなのに。
紅玉は長女というだけで、婚約者の地位を手に入れた。
ひとりだけ金剛の傍にいることを許される、権利を手に入れた。


どうして私じゃだめなのだろう?
金剛のことを幸せにしてみせるのに。
今までみたいにうまくやっていく自信があるのに。

姉が婚約者だというだけで、どうして自分は金剛に近づけない位置まで追いやられてしまったのだろう。


ふと、翠玉はある疑問に辿り着いた。

金剛は自分のことをどう思っているのだろう?

工房に入らせてくれる、こうやって遠乗りにも連れてきてくれる。
それでもやはり、『ただの妹』なのだろうか?



翠玉は、願うように金剛に身を寄せる。
そして、意を決して金剛に尋ねる。


「兄様は…姉様の他に想う方がおられるのですか?」


金剛は明るく笑って答えた。


「今はいない。だが、例えば石を彫っている時のように、全身全霊でその人と向かい合いたい思う人に出会ったら、それが俺の恋かもしれん。悪あがきのようだが、紅玉姫という婚約者がありながら、俺はまだそんな女性を探しているのだ。」

< 28 / 72 >

この作品をシェア

pagetop