Jewels
周囲は次第に暗くなり、星がちらちらと瞬きだした。

翠玉は不思議そうに荒野の方を見ている。


「兄様、あれ、なにかしら。」


高台から見える荒野に、光が灯っているのが見えた。
何十人かの白装束の人々が円を作り、その中に3人の女性が見えた。
ひとりの女性は大きな杖を持って空を仰いでいる。


「…神殿の儀式かな。星占いをしているんじゃないか?」


この国にはひとつの神殿があり、神が住んでいるとされていた。

神殿に勤めるものは皆、世俗との縁を断ち切り、星占いなどで神の神託を得ていた。
彼らは神託のみによって動き、王政とは完全に分離していた。

時には王政に助言をし、民衆からの信仰が厚いことを考えると、王族よりも強大な権力を持つと言っても過言ではなかった。

王族の権力が及ばぬ、唯一の存在であったのだ。


「じゃぁ、あの真ん中にいるのが、噂の3人の巫女?」


「たぶんそうだろう…。」


金剛は眼を凝らす。
少し距離はあったが、3人の巫女の様子が見えた。


黒髪の巫女、金髪の巫女、藍色の髪の巫女。


3人の巫女には人の運命が託されているという。
第1の巫女が糸を紡ぎ、その内容を決め、第2の巫女が糸を手繰り、その長さを決める。

そして第3の巫女が糸を切る。


この国の人々の運命は、その巫女たちの操る糸によって決められているというのだ。
言うなれば生き神に近い存在であった。




金剛はなぜか、3人のうち、藍色の髪の巫女から眼を離せなくなっていた。

藍色の髪に白い肌、そして銀色の髪飾り。
琥珀が昼間に持ってきた大きなラピスラズリを思い出す。

藍色の闇、夜空に光る星と、藍色の髪の乙女。


早くあのラピスラズリを彫りたいと思った。


「インスピレーションがわいた。」


金剛はおもむろに立ち上がる。


「戻るぞ。」


翠玉は素直に従う。



金剛の眼が、見つめていた巫女たちを思いながら。

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