Jewels
第3章
あれからしばらく、金剛は石彫に熱中していた。

琥珀が見つけてきたという、上質なラピスラズリに対して、たいそう真剣に取り組んでいた。

石は磨くごとに藍色のツヤと、細やかな銀色の星のような輝きが加わってゆく。

金剛は、無骨な石がこうして輝きを増してくる瞬間が大好きだ。

なんでもない物から、輝きを見つけ出す…魅力を引き出してやるのだ。

その感動と興奮、それを味わうために、そのために、石彫りをしているのだと思う。





翠玉はあの日の金剛の様子が気になって、度々様子を見に来ていたが、金剛がラピスラズリに夢中になるのを見るたび、嫌な予感がしてならなかった。

ラピスラズリ。

藍色の石。

あの日見た巫女。

藍色の髪の乙女。

金剛が彼女にインスピレーションを受けたのは明らかだった。

しかし、金剛がどんな想いでそれに取り組んでいるのかは解らない。
それでも翠玉は、金剛の情熱を前にして、嫌な予感を拭い去れなかった。

金剛は、彼女自身に対して興味があるのか…気になるのはそればかりだった。





ある日のことだった。

翠玉がいつものように金剛の工房に向かおうとしていると、作業着姿の金剛が外に出て行くのを見つけた。

人目を気にしている様子である。

翠玉は、反射的に身を隠し、金剛の後をつけることした。

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