Jewels
第4章
翌日のこと。


紅玉は王宮の庭園で金剛を待っていた。
よい天気で、木陰は涼しく、紅玉の気持ちも自然と穏やかだった。

金剛は約束の時間になっても来ない。
いつものことなので紅玉はもういちいち怒ったりしない。

怒っても金剛の心を遠ざけるだけだ。
笑顔で迎えよう、そうして金剛が自分と一緒にいたいと思ってくれるようになれば…


紅玉は木陰でそんなことを考えていた。


ふと、王宮の庭園の入り口に目をやると、黄金が走ってくるところだった。

自分の方にめがけて、一目散にやってくる。
もう結構な齢であろうに、黄金はいつもちょこちょこと俊敏に動いている。
紅玉はいつも感心していた。


それにしてもこのタイミングで黄金が来るというのはどういうことなのだろう。

金剛に何かあったとしか思えない。

紅玉は嫌な予感に胸が締め付けられた。


紅玉のところにたどり着くと、黄金は息を整えるように何度か肩を上下させる。


「黄金さん、どうなさったのです?」


紅玉は平静を装って優しく声をかける。


「も…申し訳ございません、紅玉様…あの、金剛様とのお約束の件なのですが。」

「ええ、金剛様がどうかなさって?」


黄金は言いにくそうに顔をしかめる。


「あの、いつもの石彫りが…ちょっと手が離せないとのことで…」

「お会いになれない、と?」

「…はい…申し訳ございません…。」

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