Jewels
紅玉は軽くため息をつく。


今にも泣きわめきたいくらいだった。

しかし。

昨日の翠玉のただならぬ様子が頭をかすめる。


『兄様には気をつけて。姉様。兄様の心をしっかり、捕まえていて。』


ここで怒ってしまえばいつもの繰り返しだ。
金剛の心は離れるだけ。

ただでさえ金剛の心には自分の居場所は無いのだ。

こちらから歩み寄らなければ。
なにか、変えなくては。


翠玉は、なにかしら金剛の異変に気づいたのだろう。
自分もそれを確かめなければ。


努めて冷静に、紅玉は自分に言い聞かせ、深呼吸をする。


「黄金さん。」


いたたまれない様子で紅玉の側にうつむいていた黄金が、びくりと顔を上げる。


「な、なんでございましょう?」

「金剛様は石彫りに夢中なのよね?」

「ええ…何度もお声をおかけしたのですが、本日はなにやら非常に頑固で…。」

「わたくし、お邪魔はしませんから、作業するところを見ていてかまわないかしら。」

「ええ!?」

「翠玉もよく作業中の金剛様のところに遊びにいっているようじゃない?わたくしも、金剛様が石彫りをするところを見てみたいわ。」

「はぁ…あの…その…。」

「なにか問題でも?」

「その…今日の金剛様は、少し…夢中になりすぎているようですから…」

「かまいませんわ。」


紅玉の強い言葉に、黄金はただうなずくしかなかった。

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