Jewels
翠玉は必死だった。

大好きな金剛がどこか遠くへ行ってしまうような気がしていた。

どうしても側にいたくて、そのためなら悔しいけれど紅玉に金剛を引き止めておいてもらうのが一番有効だと思った。

しかし、翠玉の見たところ、金剛はいつも紅玉から逃げている。

自分だけでなく、金剛を後押ししてくれる人が必要だと思った。

だから琥珀に頼んだ。

琥珀の想いは知っていた。
金剛と紅玉の仲をとりもつことが、琥珀にとって酷な頼みであることも理解していた。

それでも、それぞれがあるべきところに納まるのならば。
瑠璃と金剛が出会う前の、予定されていた居場所に納まるのならば、翠玉はどんなことでもしようと思った。

そうでなければ、金剛がどこかへ行ってしまう、瑠璃に心を奪われてしまう。
それが怖かった。

翠玉は、ただ金剛を失いたくなかった。
自分も含めたそれぞれが、あるべき場所に納まればよいと思っていた。


意図すべき方向に、動かせると思っていた。



けれど、運命は必ずしも人間の思う通りには動かないもの。







翠玉は、自分がその運命に既に流されていることに、気づいていなかった。







ただ、巫女の紡ぐその糸だけが、皮肉な運命を知っていた。




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