Jewels
琥珀は混乱していた。

翠玉が金剛と紅玉の仲を深めることに対して積極的になったことはよかった。
翠玉さえその気になったのならば、誰も悲しまないで済む。

しかし、気になるのはその態度の急激な変化だ。
つい先日まで頑なに金剛を想っていた翠玉を、琥珀は知っている。

金剛との間に、紅玉との間に、何かあったのだろうか?

翠玉の自然な気持ちの変化にしては、急すぎるのだ。
何か大きなきっかけがあったとしか思えない。


「紅玉様だけじゃなくて、翠玉なんてオコサマまで狙ってんのか?隅に置けねぇなぁ。」


にやにやと笑いながら瑪瑙が話しかけてくる。


「そんなんじゃない。」


琥珀は曖昧に笑って返す。


「お前なぁ、自分の立場を判ってないだろ。」

「なにが?」

「王族に3人も知り合いがいるんだぞ?お前さえその気になれば、王族の仲間入りも夢じゃないんだぞ?」

「興味ないね。」

「ほんっと欲がねえなぁ。」

「だから瑪瑙が欲深すぎるだけだろって。」


琥珀は瑪瑙を軽く叩いて立ち上がる。


「ちょっと出てくる。」

「おぅ。」


立ち去る琥珀の背中に、瑪瑙が話しかけた。


「なぁ、もしもお前が王族の仲間入りを果たしたらさ、俺も召抱えてくれよな。」

「何言ってんだ?」


琥珀は笑いながら振り返る。
瑪瑙も笑って返す。
が、その眼には真剣な光が宿っていた。


「もしものときは、な。」


琥珀は逃げるように言葉を残して去った。

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