Jewels
見かねた少女が声をかける。


「黄金さん、落ち着いて?」


黄金は少女が部屋にいたことに初めて気付き、身を正す。


「これはこれは翠玉(スイギョク)様。ご一緒でしたか。」

「ええ、また姉様との約束をすっぽかすといけないから、見張っていたの。」

「それはそれはご足労でした。金剛様は、この黄金が責任を持って紅玉(コウギョク)様のところにお届けいたしますので、御安心下さい。」


急に立ち振る舞いを変えた黄金に対して、金剛は皮肉をこめてまた口をはさむ。


「黄金、俺を物のように扱うな。無礼だぞ。」

「申し訳ありません、そのようなつもりでは!」

「お前に届けられずとも、俺は自分の足で行く。」


黄金は、しめた、とばかりに顔色を明るく変える。


「…誠でございますか!?『自分の足で行く』、と、今そうおっしゃいましたか!?」


金剛は自分のおかした失言に気づき、片方の眉毛をぴくりとあげた。


「…行けばよいのだろう、行けば!」


不機嫌そうに目を閉じると、やけっぱちのように答えた。

< 6 / 72 >

この作品をシェア

pagetop