Jewels
白銀から琥珀の素性について尋ねられた翠玉は、まっすぐに紅玉の部屋へ向かった。

何が起こったのか、わずかに想像はついた。
おそらく、金剛の工房で2人は鉢合わせた。
問題はその後だ。

白銀は琥珀のことを、『紅玉様を採掘場から送って来た採掘工』と言った。
紅玉は、金剛の工房で琥珀と鉢合わせ、その後金剛と別れ琥珀に採掘場へ連れて行かせた、ということになりはしないか。
そして琥珀を自宅まで送らせた…

翠玉は、頭の中でぐるぐると回りだす憶測をかき消そうと、紅玉の部屋のドアを叩いた。


「姉様??もうお休みになられたの?」


自然と声が強くなる。

しばしの沈黙を置いて、静かにドアが開く。
すでに夜着姿の紅玉が、翠玉を部屋に招き入れた。

紅玉はベッドに腰掛ける。
翠玉には椅子を勧めた。

ゆったりとした様子の紅玉に、翠玉は抱えていた疑問を少しずつぶつけていく。


「白銀から聞かれたの。琥珀って誰なんだって。それで、今日琥珀が姉様を採掘場から送ってきたって聞いて………どういうことなの?姉様。今日、いったい兄様の工房で何があったの?」


紅玉はうつむいて、淡々と答える。


「待ち合わせの場所で待っていたら、金剛様には会えないと黄金さんが伝えに来た。邪魔はしないと言って工房まで押し掛けたけど、相手にしてもらえなかった。それで工房を飛び出したら、追いかけて来た琥珀につかまった。琥珀は優しそうだから、金剛様の代わりに採掘場を案内してもらった。それだけよ。」

「兄様との約束はよかったの?」

「相手にしてもらえなかったのよ、翠玉。金剛様、イメージモデルとやらに夢中らしいの…貴方の言ったとおりだった…。」

「だからって…だからって琥珀に代わりに相手をさせたの?」


翠玉の真剣な瞳が紅玉を見つめる。
紅玉はうつむいたままだ。


「…ええ、彼、一生懸命採掘場の説明をしてくれた。大変な仕事ね。興味深かったわ。今度素敵な石を見つけたらプレゼントしてくれるそうよ。」


翠玉は声を落とすと紅玉の表情を探るように問いかけた。


「姉様…琥珀の気持ちは、知っているの?」
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