Jewels

愛されない苦しみ。
解らないわけがない。
翠玉だって、金剛に愛されていない。
いや、愛されていないわけではないが、女として見られていない。
だからと言って、愛してくれる人に逃げるのか。
親の取り決めも無視するのか。
誰よりも翠玉が欲しがっていた、金剛の隣を与えられながら、紅玉がそれを言うのか。

ふつふつと沸き上がる苛つきを拳に込めて、紅玉の部屋の扉にぶつける。

ダンッ

硬く大きな音が響いただけで、何も解消されはしなかった。
まるで翠玉の想いは拒否されたかのようだ。
行き場の無い、想い。

肩で呼吸を整える。

いや、自分の怒りを紅玉にぶつけている場合ではない。
そんなことよりも…紅玉と琥珀が諦めてしまったら、誰が金剛に歯止めをかけるというのか。





深く暗い、絶望という名の底も見えない奈落だけが、翠玉の前に広がっていた。




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