Jewels
第5章
「なぁなぁ、昨日の、どういうこと?」


朝っぱらから琥珀は瑪瑙に捕まっていた。

昨日紅玉を採掘場に案内した際に、紅玉が目立たない配慮、および琥珀が仕事をさぼっていることをごまかすことを、瑪瑙に頼んでいたのである。

瑪瑙は紅玉に大喜びで挨拶をしていた。
思いつく限りの美辞麗句を並べ、紅玉に取り入っていた。

瑪瑙は会わせてくれただけで充分、貸し借りは無し、と言っていたくせに、今日になると昨日の借りを盾にこの様である。
つくづく欲求に忠実な男だ。


「どういうって…紅玉様に頼まれて。」


琥珀は昨日の幸せなひとときを思いだし、顔を赤らめつつ小さな声で答える。


「金剛が連れてくるならまだ解るよ。お前が翠玉を連れてくるとかさ。なんで、『お前が』『紅玉様を』お連れすることになったんだよ?金剛は?」


瑪瑙はずらずらと疑問符を並べ立て、琥珀に詰め寄る。

琥珀はどう返事をしたものか、困っていた。
詳細を素直に話せば、金剛にも紅玉にも迷惑がかかる。
不仲なだけでなく、金剛は他の女に夢中だなどと、瑪瑙に知れたら翌日には町中の噂だろう。
どこまでを、どう話せば障りがないか…
そうこう考えているうちに、瑪瑙が口を挟んだ。


「少なくとも、俺に詳細を話せない面倒なことが起きてるってことだな。」


ぎくり
琥珀の身が縮む。
瑪瑙はにやにやとしながら、琥珀の頭の中を開いて読み解くかのように続ける。


「まぁ、さしずめ金剛と紅玉様が喧嘩した、お前が仲裁に入って、紅玉様のお相手を押し付けられた、そんなところか。」

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