Jewels
思わぬ展開に黄金は喜びを隠せない。
年齢が疑われる程の迅速な動きで金剛を急かす。


「それではさっそくお召し物をお着替えいただいて…」

「うるさいな、どのようななりをしていようと、俺は俺だ。身なりで人間を判断するような女なら、こちらから願い下げだ。」

「そのような問題ではありませんよ、マナーの問題です。姫君に失礼です。」

「身なりに気を遣って、約束に遅れてしまう方が失礼ではないのか?」

「また、そのような屁理屈を…」


金剛は一度言い出したら聞かない頑固な性格である。

しかし、石細工をしていた石埃だらけの作業着のまま姫君に会わせるわけにはゆかない。

黄金はどうしたものか困り果てていた。


「とにかく、俺はこのままで行くぞ。身なりを正せと言うのなら、もはや行かない方がマシだ。」

「金剛様、あまり黄金を困らせないで下さい。」

「俺の我が侭を聞くのがお前の役目だろう。」

「そんな…」


見かねた翠玉が口をはさむ。


「兄様、あまりに理不尽よ。次の王となる方にあるまじき暴挙です。家臣を大切にしてこそ、良い王を言えるのではないのですか?」


そう、金剛はこの国のたったひとりの王子。
つまり次の王となるべき存在なのである。

が、しかし金剛は聞かない。
奔放な性格の金剛は、その身分が窮屈で仕方ないのだ。
それで黄金をからかってごまかしてばかりいる。


「お前は黙っていろ、翠玉。さぁ、このまま行くか、行かないか、どちらが良いのだ、黄金?」


金剛はにやりと笑んで、小さく縮こまっている黄金を見下ろした。
黄金は困り果て、返事をできないでいる。


ふと、小さな声で翠玉がつぶやいた。


「兄様、そんなに姉様に会うのが嫌なの…?」


その声に含む哀しげな表情に、金剛は気付かない。
一瞥して怒りを含んだ声で制するだけだ。


「黙っていろといったはずだ、翠玉。」

「許嫁だと言うのに……。」


翠玉の微妙な表情の変化に気付かないまま、金剛は怒って部屋を出て行く。


「親が決めたしきたりに俺が従ういわれは無い。俺は自分のことは自分で決めたいんだ。」

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