Jewels
灰が跡形もなく消え去るのを見届けて、翠玉は瑪瑙に向き直る。


「ありがとう、瑪瑙。兄様には、このこと秘密にしておいて。その分多く払うから。」

「あぁ。」

「それで、いくら必要なの?」

「実は、まだ金剛とは口止め料については詳しく話していないんだ。『それなりに用意する』とは確認してあるんだけどな。」

「そう…じゃぁ瑪瑙の言い値になるのかしら。」

「たぶんな。」


口止め料の金額も確認しないまま、行動を起こしてしまったことを翠玉は少なからず後悔した。
これでは瑪瑙にいくら請求されるか判らない。
自分に工面できる程度であればいいが…
うつむく翠玉に、瑪瑙が口を開いた。


「金じゃなくてもいいか。」

「え?」

「俺の地位を保証してほしい。あと、琥珀の。」


思ってもみない瑪瑙の要求に、翠玉は肩すかしをくらったような気分になった。


「お金じゃなくて…いいの?」

「あぁ。王宮に自由に出入りできる権利が欲しいんだ。」

「そんなことでいいの?」


瑪瑙はうなづく。


「単なる石商人でもいい。しかし職業柄、細工物を扱ってる奴を何人か知ってる。そういうのを王宮で自由に売りさばけるようにしてほしい。金はそこからもらう。」

「商人になるつもりなの?」

「あぁ、石から選んで好きな細工物を作れるオーダーメードだ。儲かるだろ?」


翠玉の肩の力が抜ける。


「呆れた…どこまで貪欲なのよ、瑪瑙ったら…。」

「俺みたいな風体の奴だけだと儲からないからな、真面目そうな琥珀と組んでやる。どうだ?」

浅黒い肌に無精髭、伸びたところを無造作に束ねられた髪。
確かに瑪瑙は、琥珀に比べればちょっと真面目ではない印象を受ける。
客からすれば正当な価格で買い物ができているか疑われても仕方ないだろう。
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