Jewels
「兄様!」


部屋を出て行った金剛を追って、翠玉が部屋を出ようとする。

が、すばやく黄金が前に立ちふさがる。
この老人は、本当に歳の割に行動が俊敏なのだ。


「翠玉様、黄金にお任せ下さい。」

「でも、私のせいではない?」

「どうぞ、お気になさらず。金剛様の虫の居所が悪かったのでございましょう。」

「生意気なことを言ってしまったもの…行って謝ってきます。姉様のところへお連れしないと。」


制止する黄金を避けて部屋を出ようとする翠玉を、黄金はより力強く引き止めた。

そして少し声を低くして、言葉を発する。

顔はいつもの黄金なのに、その目は笑っていなかった。


「…翠玉様。…紅玉様のことを思うなら、ここは黄金にお任せ下さい。金剛様は貴女の姉上の夫となるお方。翠玉様も、もう15におなりなのですから、姉上を差し置いて、子供の頃と同じようにいつまでも金剛様のお側へ寄るのは問題なのですよ。」


翠玉の顔がこわばる。


「…解りました。」


黄金は微笑むと、


「では、後はお任せ下さい。」


金剛を追って去っていった。

< 8 / 72 >

この作品をシェア

pagetop