Jewels
翠玉は、金剛の王族の親戚筋にあたる一族の第二の姫であった。
第一の姫である姉の紅玉は、翠玉の3つ年上、金剛よりひとつ年下であった。
そのプライドの高い性格からか、小さな頃から両家の交流においても、『姫』と『王子』として接して来た。
翠玉はというと、少し違っていた。
生まれ持った人懐こさと好奇心とで、『石ばかり彫っている王子』に興味がわいた。
それで小さな頃から金剛の工房に出入りし、兄と慕っていたのだ。
が、紅玉と金剛とが年頃になった昨今、ふたりを許嫁として認める約束が両家でとりかわされた。
許嫁という名の下に、ふたりは定期的に逢瀬の時間を設けられている。
ふたりの仲を深めるための、世俗で言うところの、デートだ。
翠玉は、正直不愉快だった。
「不満そうだな、翠玉。」
翠玉が振り返ると、ひとりの男が立っていた。
明らかに平民の、しかも採掘工の作業着だ。
昔から金剛の工房に出入りしていた翠玉にとっては、顔見知りの存在だった。
「琥珀(コハク)!いつからいたの?」
「さっき。じいさんが怒鳴ってたから隠れてた。」
「…また窓から入って来たのね?」
「そうだけど?」
「いつか泥棒に間違えられて、憲兵に捕まっちゃっても知らないわよ?」
「そのスリルが癖になるんだよなぁ。」
琥珀は硬そうな髪の毛をわしわしとかいて、明るい表情で屈託なく笑う。
第一の姫である姉の紅玉は、翠玉の3つ年上、金剛よりひとつ年下であった。
そのプライドの高い性格からか、小さな頃から両家の交流においても、『姫』と『王子』として接して来た。
翠玉はというと、少し違っていた。
生まれ持った人懐こさと好奇心とで、『石ばかり彫っている王子』に興味がわいた。
それで小さな頃から金剛の工房に出入りし、兄と慕っていたのだ。
が、紅玉と金剛とが年頃になった昨今、ふたりを許嫁として認める約束が両家でとりかわされた。
許嫁という名の下に、ふたりは定期的に逢瀬の時間を設けられている。
ふたりの仲を深めるための、世俗で言うところの、デートだ。
翠玉は、正直不愉快だった。
「不満そうだな、翠玉。」
翠玉が振り返ると、ひとりの男が立っていた。
明らかに平民の、しかも採掘工の作業着だ。
昔から金剛の工房に出入りしていた翠玉にとっては、顔見知りの存在だった。
「琥珀(コハク)!いつからいたの?」
「さっき。じいさんが怒鳴ってたから隠れてた。」
「…また窓から入って来たのね?」
「そうだけど?」
「いつか泥棒に間違えられて、憲兵に捕まっちゃっても知らないわよ?」
「そのスリルが癖になるんだよなぁ。」
琥珀は硬そうな髪の毛をわしわしとかいて、明るい表情で屈託なく笑う。