Voice -君の声だけが聴こえる-
 そう答えると、詠斗は紗友の家に向かって歩き始めた。しかし、すぐさま自転車のサイドスタンドを立てた紗友に腕を掴まれ、強引に体の向きを変えさせられる。

「ねぇ……大丈夫?」

 やっぱり心配そうな顔をして、紗友はそう口にした。

「……わからない」

 その答えに一番驚いたのはたぶん自分だろうと詠斗は思った。

 わからない、なんて曖昧な言葉を紗友に対して口にするなんて。そんなことを言ったら、間違いなく紗友は自分にくっついて離れなくなるというのに。

「一緒に行こうか? 私も」

 詠斗の予想に反することなく、一歩踏み出しながらそう言う紗友。詠斗は首を横に振る。
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