Voice -君の声だけが聴こえる-
 ズキン、と詠斗は胸が痛むのを感じた。

 紗友の言葉がまっすぐに突き刺さって、引き抜こうにもびくともしない。

 どうしてこんなにも痛いのか。

 どの言葉が、こんなにも鋭く胸を突いたのか――。

「……今のままじゃダメだよ」

 そう、紗友は涙ながらに続ける。

「今のままじゃ二人とも……互いに首を絞め合ってるだけで、何の救いにもなってないよ……!」

 ついに、千佳が膝を折ってその場に崩れ落ちた。聴こえこそしないが、声を上げて泣いているのだろう。
< 208 / 247 >

この作品をシェア

pagetop