Voice -君の声だけが聴こえる-
 真剣な眼差しで紗友は言う。詠斗もまた、その視線に応えるようじっと紗友の瞳を見つめた。

「それは俺だって同じだよ」

 そう言った詠斗の頬を春の風がなでる。揺れた黒髪の隙間から、今はもう何の意味も為していない小さな補聴器がちらりとその顔を覗かせた。小学生の頃からの付き合いなので見慣れているはずだろうに、紗友の顔はわずかに曇る。詠斗は右手で髪を耳元になでつけた。

 その時。




 お願い、誰か。

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