この手をぎゅっと、離さないでね?
光琉くんの気持ちを思うと、涙が次から次へと溢れて止まらなくって。
ブレザーの裾で両目をごしごし拭いていると、スパイシーな香水の匂いがふわっ、と鼻を抜ける。
光琉くんの気配をすぐ近くで感じたから、びっくりして顔をあげた瞬間。
私は光琉くんに、きつく抱きしめられていた。
「ちょっ……ひ、光琉くん!?」
胸板を押して身体を引き離そうとしても、光琉くんは両腕に力をこめるばかりで、私を離そうとはしなかった。