この手をぎゅっと、離さないでね?
光琉くん、泣いているみたいだったから。
辛そうだったから。
誰でもいいから、すがりつきたかっただけなのかなって。
ちょうどそこにいたのが私ってだけであって、ただそれだけのことだとだったんだろうな。
「次は~、ホタルの里公園前〜。お降りの際は、足元に注意してください〜」
洋くんは次の停留所で降りなきゃいけないのに、今日も紫色の停車ボタンを押さなかった。
「洋くん……いいの?家の前を通りすぎちゃうよ?」
「いいって。あかりと一緒にその次で降りるから」