この手をぎゅっと、離さないでね?
洋くんとバスで一緒に帰る時は、洋くんはいつも家の前を通りこして私の家のそばの停留所で降りるんだ。
「いつも悪いなぁ…。家を通りこしてまで送ってもらっちゃって…」
「通りこしてっていうけど、ホタルの里公園からこの田の中まで10分しか離れてねぇじゃん」
「まぁ……そうなんだけどね。申し訳ないなぁ」
私がバス停のそばにある青いベンチに座ると、洋くんもそのとなりに座った。
広大な田んぼを眺めながら、こうしておしゃべりをするのは付き合う前からしていたことで。
いまではもう、日常のものになっているんだ。