この手をぎゅっと、離さないでね?
「多津、仙崎。お前ら遅刻が多すぎるぞ」
ほら……やっぱり洋くんだ。
頭に薄らとしか髪の毛がない数学教師、片山先生がさっそく注意を飛ばした。
「ほら、片山が言ってんぞ、洋。お前が寝坊ばっかするからじゃん」
シャーペンを片手に振り返ってみたら、多津翔平(たづしょうへい)くんがけらけら笑いながら洋くんの背中を叩いている。
耳が隠れるくらいの、サラサラとした金髪。
身長は洋くんよりちょっと低めで、手足はすらりと長い。
切れ長の目元がクールで、肌の色は雪のように白いから影では王子様っぽい、なんて言われているんだ。