この手をぎゅっと、離さないでね?
「ん?どうした?」
足を止めて振り返った洋くんは、優しい目をしていた。
ブレザーを掴んでいた私の右手をそっと離して、ぎゅっと握りしめてくれる。
「やっぱり一緒に帰ろうか?」
洋くんと目があった瞬間、ボッと顔の熱があがる。
やっぱりはるちゃんのところには、行ってほしくない。
「その……気をつけてね、って言いたかったから…」
だけど、言わなかった。
はるちゃんは洋くんの友達だもん。
それに2人きりで会うわけじゃないんだし…。
それなのに行かないで、なんて…。
心が狭いだとか、独占欲が強いだとかって思われたくなかった。