この手をぎゅっと、離さないでね?
『うわぁ……懐かしいなぁ!』
小学3年生のころ。
お父さんの仕事の都合で生まれ育ったこの町を離れることになって、6年ぶりに帰ってきた。
『やっぱりいいなぁーっ、都会と違ってここは落ち着くよ!』
6年まえに住んでいたアパートと、これから暮らすことになる戸建ての家はちょっとばかり離れているけれど。
それでも小学生だったころの通学路に沿った場所だから、周りの景色は懐かしいものばかり。
見渡す限りに広がる田んぼ。
民家はぽつりぽつりとしかなくて、大きな建物といえば小学校の校舎が見えるくらい。
そんなこのあたりはド田舎で、車どおりも少なくて静かだから大好きな町だった。