この手をぎゅっと、離さないでね?
「あっ……やばい。音楽の教科書、教室に忘れてきちゃったぁ」
「えっ、取りに行っておいでよ。1時間目がはじまるまで、まだ少し余裕があるし」
5階の音楽室の目の前まできて、教科書がないことに気づいた私は慌てて来た道を戻りはじめた。
洋くんに『1時間目は音楽室だからね。早く来てね』ってラインしてみたり。
女の子と2人きりになったときの男の子の気持ちを考えすぎたせいか、教科書の存在を完全に忘れちゃってたよ。
「あっ、光琉くん」
小走りで階段を駆け下り、3階まで来たところで下から登ってきた光琉くんとばったり鉢合わせた。
「うぉ、びっくりした。あかりかー」