この手をぎゅっと、離さないでね?



「洋くん……?」



洋くんを見るとなぜだか安心してしまって、じわじわと視界が揺らいできた。



涙でぼやけた視界の中でも洋くんの瞳が、みるみる怒りに満ちていくのがわかる。

私から光琉くんへ視線が変わったときには、普段は穏やかな瞳が血走っているように見えた。



「尾崎テメェ!今あかりに何してたんだよ!」



荒々しい怒号が階段に響く。



「なんだよお前。最悪のタイミングでくんなよな」

「何してたんだって聞いてんだよ」

「キスだけど?」



光琉くんが笑いながら答えると、洋くんの眼差しがより一層鋭くなった。



「テメェ……ぶっ殺す!」


< 257 / 347 >

この作品をシェア

pagetop