この手をぎゅっと、離さないでね?
「洋くん……?」
洋くんを見るとなぜだか安心してしまって、じわじわと視界が揺らいできた。
涙でぼやけた視界の中でも洋くんの瞳が、みるみる怒りに満ちていくのがわかる。
私から光琉くんへ視線が変わったときには、普段は穏やかな瞳が血走っているように見えた。
「尾崎テメェ!今あかりに何してたんだよ!」
荒々しい怒号が階段に響く。
「なんだよお前。最悪のタイミングでくんなよな」
「何してたんだって聞いてんだよ」
「キスだけど?」
光琉くんが笑いながら答えると、洋くんの眼差しがより一層鋭くなった。
「テメェ……ぶっ殺す!」