この手をぎゅっと、離さないでね?
1歩先をいく洋くんと私の間に、いつものような明るい会話はない。
それは洋くんの部屋に入ってからも同じで、重たい空気が流れていた。
「あの……。鼻、骨折してたみたいだね。痛そう…」
部屋の中は相変わらず足の踏み場がなかったから、ベッドに座る洋くんのそのとなりに腰かけた。
「うん、マジで痛ぇ。まぁでも……俺もアイツの前歯2本折っちまってたみてぇだからお互い様だわ」
洋くんはすぐとなりに座る私を見ることはしなかった。
それに声のトーンも変わらず低い。