この手をぎゅっと、離さないでね?
「もっ……ももも持ってませんっ!」
いや、本当はあと2000円くらいはあるんだけどね。
でもある、なんて言ったら取られちゃいそうだしな…。
「なんだ、ねぇのか。貧乏だなぁお前。じゃあいいわ、歩いて帰るから」
「え?あの…歩くっていうのは?」
私たちの元にむかってくるバスはもう見えているのに?
「財布なくしたから乗れねぇんだわ」
スクールバッグをひょいと拾いあげた尾崎くんは、私に背中を向けると歩きはじめた。
それで尾崎くんは、スクールバッグの中を必死な顔をして漁ってたのか…。
「ちょっ……ちょっと待ってください!」