この手をぎゅっと、離さないでね?
「はい、どうぞ使ってください!」
尾崎くんの手のひらにちゃりん、と300円乗せた。
「サンキュー。助かるわ」
「いえ…どういたしまして…」
びっくりした。
……尾崎くんって、こんな顔して笑ったりするんだなぁ。
つりあがった二重の目は、鋭くて怖いなって思ってたけど。
でも笑うときゅっと目尻に線がいくつもできて、途端に愛嬌のある表情になる。
なんだか、意外…。
「アンタ、何年何組?名前は?」
私のとなりに躊躇なく座った尾崎くんが笑いかけてくれたから、ちょっと驚いた。