この手をぎゅっと、離さないでね?
光琉くんは奥側の席に座っている私を見つけた。
集まる視線なんてものともせず、肩で風を切るようにしてズンズン歩いてくる。
「昨日はありがとな」
「あ……はぁ、わざわざ…。こちらこそありがとうございます」
私の手のひらにころんと転がされたのは、500円玉だった。
「あれ、光琉くん。私が貸したのは300円だよ?200円多いよ」
「それは少ないけどお礼だよ。ジュースでも買えや」
「あ……ありがとう…」
光琉くんは満足げに微笑むと、さっと踵を返して教室から出ていってしまった。