借金取りに捕らわれて 2
「うちの坊がご迷惑をお掛けしました。」


深々と頭を下げた加納さんは、泣く子も黙るいかつい顔をしているが、かなり礼儀正しい人だ。


「いえ、いつものことですから気にしないで下さい。」


「よろしければ、ご自宅までお送りしますよ。」


「いえ、折角ですが、急ぎの用が出来たのでこれからそこに行くところなんです。」


「では、近くまでお送りしましょう。その方がタクシーを掴まえるより早いでしょう。」


武も後部座席のシートに突っ伏しながら「乗ってけ乗ってけ」と言うので、拓海さんを待たせるよりは良いかと、加納さんのお言葉に甘えさせてもらうことにしたのだ。



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