借金取りに捕らわれて 2
「あの…秋庭さん、雪斗君と本当は何があったんですか?」

「本当も何も、さっきあいつが言ってただろ。」


凄く違和感がある。

秋庭さんはそれくらいで手を出す人じゃないと思う。
それに、あの時の秋庭さんの表情…
二人の間に別の何かがあったんじゃ…


「私には言いたくないことですか?」

「………」

「本当は何があったんですか?」


秋庭さんは一口コーヒーを飲んでから、口を開いた。


「…何もないよ。」


その言葉で、私と秋庭さんの間に見えない線を引かれた気がした。

1メートルも離れていない二人の間に引かれた線。

人には踏み入れられたくない部分というものがあるのは分かっているけれど、
そこに無理に踏み入れない方が良いということも分かっているけれど、
どこか寂しく思ってしまう。

それは『好きだ』と言ってくれる人だから、余計にそう思うのかもしれない。

でも、"仮"で付き合っている私が、そう思うことは非難されても仕方がない思いのような気もして、私もコーヒーと共に言葉を飲み込んだ。

そして、本当に言いたかったことは腹の底へと沈んでいった。

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