借金取りに捕らわれて 2
天井まで伸びる棚がいくつも並んでいるその一番奥に、迷うことなく進む。

ここの区画は私が全部整理し直したから、どこに何があるかは私が一番分かっている。

この倉庫管理課に配属された当初は、膨大な備品は無造作に放置され、ファイルは種類もばらばらだし五十音順にさえなっていなかった。

それが今やどうだ。

この整理された棚を見るとやっとそれっぽくなってきたなとしみじみ思う。

ほんと、今までここの担当の人は何してたんだか…



目的のファイルは棚の一番上の段に入っていた。

きょろきょろと辺りを確認するが、近くに踏み台はなさそうだ。

背伸びすれば取れないことはないし、いっか。

私は、棚に手を駆けつま先立ちになり、これでもかと手を伸ばした。

指先にファイルが触れる。

あ、と…もう~ちょっ、と~



と、その時、足元に影が射し、何かがふわりと背中を覆った。

指先に触れていた感触が滑っていく。


「あっ…」


顔を上げれば、真後ろに林田さんが立っていた。

しかも、今にも背中に熱が伝わってきそうなほど近い。


「はい、どうぞ。」


私越しに軽々と取った目的のファイルが横から差し出される。


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