借金取りに捕らわれて 2
「すみません。」


只でさえ棚同士の感覚が狭いのに、そこに二人でいると更に狭い場所で、受け取ったファイルを胸に抱き棚に体を擦るように体を回転させて、お礼の言葉と共にペコリと軽く頭を下げた。


「助かりました、ありがとうございます。」


「いいえ。どういたしまして。」



林田さんはメタルフレームの眼鏡越しに、にこりと微笑みを浮かべた。


「柏木さん、そろそろ帰りましょう。定時過ぎてますよ。」


「えっ!?そんな時間ですか!?」


腕時計を見れば、定時はとっくに過ぎていた。


集中して仕事をしていると、時間が経つのは本当あっという間だ。

もう少しやっていきたいけど、この後のジュリエットのバイトも入っているからそろそろ切り上げないと。

今日は遅番で良かった。そうじゃなかったら今頃駅までダッシュコースだ。

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