借金取りに捕らわれて 2
「いっ…!」


ジャガイモの重さもあって、肩を押された私は床一面に中身をばらまいた。それはもう豪快に。


「フフフッ…」


膝を付く私に、麗香さんは含み笑いを残し、何事もなかったかのように歩いて行く。



こいつ~

業とぶつかったわね!



「あ、あの!」


私が抗議しようとすると、音を聞き付けた玄さんが厨房から顔を出した。


「お前、ド派手にやったな。」


「こ、これは!…」



麗香さんのせいで転んだと言おうとしたが…

なんだか告げ口するみたいで口をつぐんだ。

腹は立ったが、そういうのはなんかしたくない。



「いえ…すみません…直ぐ片付けます。」



怒られるだろうと覚悟していたが、次に掛けられた言葉は意外なものだった。


「気にすんな。世の中良い奴ばっかじゃねえ。」


それは、まるでここで何があったか全て見ていたような言い方だった。


「えっ、あの…」


「もたもたすんな!早く片付けな!」


「は、はい!」


一喝され、背筋が伸びた私は散らばったジャガイモを手早く拾い集め、重い箱を両手に厨房へと急いだ。
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