借金取りに捕らわれて 2
まるで、尻尾をこれでもかってくらい振って喜ぶシベリアンハスキーの様に見えて、名前もまだ知らない彼のことを、なんだが可愛らしく思えてきてしまった。



「こんな状態で放っとけないですから。」


「ありがとー!お姉さん優しいですね。
そう言えばお姉さんの名前、まだ聞いてなかった。
俺、小柳雪斗。雪斗って呼んで下さいね。お姉さんは?」


「柏木浩都。」


「じゃあヒロさんって呼んで良いですか?」


「出来れば名字で呼んでほしい」と言いかけたけど、キラキラした子犬のような眼で見つめられると、何だが言いづらい…


「はあ~…何でもいいですよ…」


「やった!あっ、あと俺に敬語はなしですからね!」


うっ…敬語もなしとか、注文が多いな…
でも、同じアパートでもそんなに関わらないと思うし、いいか。


「分かりました。」


「あっ、それ!」


「…分かった。」



言い直すと、満面の笑顔が返ってきた。


なんか…凄く人懐こい子なんだろうな…


悪い子ではなさそうだけど、ご飯食べて早く帰って頂こう。



それから直ぐに、作りかけの料理を完成させると、見計らった様にご飯も炊き上がった。


雪斗君は出した朝食をにこにこしながら、本当に美味しそうに食べてくれる。


「ヒロさん!このだし巻き玉子凄く美味しいです!このお味噌汁も!ヒロさんって料理凄く上手なんですね!」

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