借金取りに捕らわれて 2
「あいつはダメだぞ。隼人さんの彼女なんだからな。」


先生のような口調で注意をすれば、年齢より若く見える顔が微笑む。


「違いますよ。新しく引っ越したアパートの隣の部屋の人なんですよ。」


「なんだ、そうだったのか。奇遇なこともあるもんだな。」


「ええ、俺もビックリしました。
それで、隣の部屋だし仲良くしときたいんですけど、あの人どんな人なんですか?」


「あいつは良い奴だぞ。弟の借金のために昼夜働いてるんだ。顔は地味だけどな。」


「へえ…そうなんですか。」



直ぐに消えてしまったから気のせいかもしれないが、奴の顔が小さくニヤリと笑ったように見えた。

俺、不味いこと言ったか?



「もっとあの子のこと教えてくれませんか?一杯奢ります。」


「いいのか!」


「ええ、丁度飲みに行くところだったんで、付き合ってもらえると嬉しいです。」



酒に思考を奪われ、あの意味深な笑顔は一瞬で頭から消えて無くなっていた。

ただで酒が飲める嬉しさから、さっきまでの怠さも吹き飛び足が軽い。
微笑む雪斗を急かし、俺達は喧騒の中へと向かった。


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