FF~フォルテシモ~
告白
 幸せそうに眠る今川部長を膝に乗せて、さっきのことを思い出した。

「……好きって言っちゃった」

 告白した時の今川部長の顔は、明らかに困惑に満ちていた。こんな私に好きって言われたって、嬉しくないよね。

「迷惑なんて思ってませんよ、だけど――」
 
 だけどの続きは、何となく予想出来る。だから聞きたくなかった。あえて拒んでしまった。

(人に気持ちを伝えるのって、こんなに勇気のいることだった? その答えを聞くことって、こんなにも胸が苦しくなるものだったっけ? 前回告白したのが大昔だから、あまり記憶にないや)

 今まで私に告白してきた男の人たちは、こんな複雑な気持ちでいたのかな。

 今川部長の頭を撫でながら、まったりと流れる時間を過ごす。不思議とすごく心が穏やかになれた。今まではキリキリしながら、人と接していた。私に対する扱いや自分自身を見てくれない相手に、いつも無性にイライラしてしまった。

 だけど今川部長は私自身をきちんと見てくれた上で叱って、ちゃんと褒めてくれる。

「明日は、何のお弁当にしようかなぁ……」

 もっとたくさん、美味しいって言ってもらいたい。こんなふうに素直になれる自分にしてくれたお礼に、私が出来ることは何かあるかな。

 柔らかい髪の毛が指に触るたびに、ドキドキする。膝の上の重みを愛しく想った。

「こんなことしか出来ないけど、傍に居させてください」

 そう言って、頬にキスをしてあげた。

 迷惑にならないようにするから、ずっと傍に居させてください。
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