ハツコイ
翌日、他部署のオフィスまで届け物をするために、エレベーターに乗ろうとした時だった。
「…倉科さん?」
背後からかけられた声に振り返ると…
「あ!こ、こんにちは!」
そこには、秘書課の三橋麗華さんが立っていた。
琉偉の偽装恋人だった麗華さん。
会社で会うのは、初めてだった。
「よかった、あなたに会いたいと思っていたの。きちんとお詫びをしなければって思っていたから。」
「えっ?お詫びだなんて、そんな…」
ペコペコする私に、麗華さんはふふっと笑う。
「でもよかった。その様子だと、安座間くんと上手くいっているのかしら?」
「あ……はい…。」
なんだか照れちゃう。
なんでわかったんだろ。
「安座間くんね、マーケティング課で一緒に働いていた時からずっと言っていたわ。忘れられない人がいるから、その人と以外、もう誰とも恋はできないって。」
「琉偉が、そんなこと…?」
うわ、泣きそう。
今すぐ琉偉に会って抱きしめたいくらい。
「私も頑張るわ。倉科さんも、お幸せにね。」
「はい!」
秘書課というだけあって、最初から最後まで完璧な麗華さん。
いつか副社長と、公に付き合えるといいのに。