ハツコイ
「お待たせ、柚。行こっか。」
残業が終わり、琉偉と一緒にご飯屋さんへ向かう。
「そういやあ、来週だな。タケルと水樹の結婚式。」
「早いねー。今でも信じられないな、タケルくんとエリって。高校時代は、二人ともそんな雰囲気なかったよね?」
しょっちゅう4人でいた私たちだけど、私と琉偉が付き合い始めたからって、二人がそういう風になってる感じはなかったし。
「ま、タケルには水樹くらいしっかりした人がちょうどいいかもな。」
そんな会話をしながら歩いていたら、あっという間にお店に到着。
「とりあえず生かなー。」
なんて言いながら、腕まくりをする琉偉。
ネクタイを緩める姿に、きゅんとしてしまう。
「柚は飲む?」
「あっ、えっと…どうしよっかな…」
琉偉に問いかけられ、お酒を飲むか飲まないかの選択をしていた時だった。
「あれ?柚奈じゃん?」
メニュー表から顔をパッと上げると、そこには中学時代の同級生、加奈子がいた。
「加奈子?久しぶり!」
「やっぱ柚奈だ!綺麗になっちゃってー!あたしこの店で働いてるの。」
「じゃあついでに頼んじゃう?」
向かい側から琉偉がメニューを覗き込む。
すると………わかったんだ。
女の勘っていうのかな。
人が恋に落ちる瞬間が、手に取るようにわかった。
加奈子が琉偉を見た瞬間、目の色が変わったの。
「…柚奈の彼氏?」
「うん、そう。」
あくまでも冷静に、笑顔を絶やさず。
だけど心の中では、ビクビクだった。
これ以上琉偉を見せたくない…なんて思ってしまった。