ハツコイ

チャペルでの式が終わり、いよいよ披露宴が始まった。




席は、柚を含めて高校時代のクラスメイトで一緒のテーブルだったから、加奈子って子とは別だったけど。




度々、彼女からの視線を感じてはいた。




柚の言うとおり、どうやら本当に俺のことを気にしているようだ。





「それでは、いよいよブーケトス!……といきたいところですが、本日は新婦様たっての願いで、ブーケを直接手渡したい方がいらっしゃるとのことです!」




そう。




これが、水樹の言っていた“作戦”だ。




「新婦エリ様の中学時代からの大親友、倉科柚奈様、前へどうぞ!」




「えっ…私?」




驚きのあまり立ちすくむ柚。




「柚奈、早く!」




水樹の声で、やっと柚奈は水樹の元へと向かって行った。




「私、ずっと柚奈の恋愛見てきた。幸せそうな柚奈を見て、私もこういう恋愛したいなって思ったの。それが今日叶ったんだ。だから、次は柚奈の番。柚奈がもっともっと、幸せになる番。」




そう言って、水樹は手に持っていたブーケを柚奈に渡した。




「あ、ありが……」




柚はというと、泣いてしまって、言葉が声にならないようだ。




そんな時だった。





「で?倉科がこんなにまで泣いて喜ぶほど幸せになりたい相手って、どこのどいつだよ?」




タケルが突然叫んだ。







…おいおい、段取り違うじゃねーか!!




俺が聞いていた水樹の作戦は、ブーケを貰うところまで。



そこで“安座間と幸せにね”って柚に言って、柚と俺が微笑み合う、それをみんなに見せつける…




そういう作戦だったはず。





どうやら、俺までまんまとハメられたらしい。




「安座間琉偉!出てこーい!!」




その瞬間、スポットライトが俺に当たった。




……マジっすか?



< 124 / 211 >

この作品をシェア

pagetop