ハツコイ
チャペルでの式が終わり、いよいよ披露宴が始まった。
席は、柚を含めて高校時代のクラスメイトで一緒のテーブルだったから、加奈子って子とは別だったけど。
度々、彼女からの視線を感じてはいた。
柚の言うとおり、どうやら本当に俺のことを気にしているようだ。
「それでは、いよいよブーケトス!……といきたいところですが、本日は新婦様たっての願いで、ブーケを直接手渡したい方がいらっしゃるとのことです!」
そう。
これが、水樹の言っていた“作戦”だ。
「新婦エリ様の中学時代からの大親友、倉科柚奈様、前へどうぞ!」
「えっ…私?」
驚きのあまり立ちすくむ柚。
「柚奈、早く!」
水樹の声で、やっと柚奈は水樹の元へと向かって行った。
「私、ずっと柚奈の恋愛見てきた。幸せそうな柚奈を見て、私もこういう恋愛したいなって思ったの。それが今日叶ったんだ。だから、次は柚奈の番。柚奈がもっともっと、幸せになる番。」
そう言って、水樹は手に持っていたブーケを柚奈に渡した。
「あ、ありが……」
柚はというと、泣いてしまって、言葉が声にならないようだ。
そんな時だった。
「で?倉科がこんなにまで泣いて喜ぶほど幸せになりたい相手って、どこのどいつだよ?」
タケルが突然叫んだ。
…おいおい、段取り違うじゃねーか!!
俺が聞いていた水樹の作戦は、ブーケを貰うところまで。
そこで“安座間と幸せにね”って柚に言って、柚と俺が微笑み合う、それをみんなに見せつける…
そういう作戦だったはず。
どうやら、俺までまんまとハメられたらしい。
「安座間琉偉!出てこーい!!」
その瞬間、スポットライトが俺に当たった。
……マジっすか?